日本睡眠学会第40回定期学術集会(平田幸一会長 於;宇都宮市)においてシンポジウム「子どもの眠りと社会」が2015年7月2日に開催されました。その趣旨は「子どもの眠りは様々な社会環境に影響される。その功罪の検証はほとんど行われていない。本シンポジウムでは4人の演者にそれぞれのお立場から社会と子どもの眠りの現状についての報告を頂く。子どもの眠りに影響する社会状況はこの4人の先生方のテーマに留まらないことは言うまでもない。またどのように対応すべきかに関するコンセンサスもできてはいない。課題山積のテーマについてパネルディスカッション形式で考えたい。」というものでした。座長は公益社団法人東京ベイ浦安市川医療センターCEO神山潤と東京都立府中療育センター小児科部長福水道郎が担当4人の演者と講演演題は以下のとおりでした。
東日本大震災を越えて学んだこと~不適切な養育環境は ”子どもの静かな眠り" を奪う~ 国立病院機構仙台医療センター小児科 田澤 雄作
小児睡眠医療の現場から 〜子どもの睡眠不足が示す社会の病理とその対処法について〜
兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター医長 田島 世貴
育てる側の問題~睡眠習慣は継続する~ 和洋女子大学人文学群こども発達学類こども発達学専修教授 鈴木 みゆき
15年間の「子どもの早起きをすすめる会」の活動から見えた子どもを取り巻く大人の問題 小児神経学クリニック院長 星野 恭子
また講演終了後来場者と約25分の意見交換が活発に行われました。
演者からは現代の日本で子どもたちの眠りが置かれている過酷な状況、すなわち短期的成果を求める社会的要請の中で、「寝る間を惜しんで○○(仕事、遊び等々)を行う」ことが奨励され、結果として日本人全体の眠りが奪われている状況の中、その影響は子供たちにも及び、その結果子どもたちの心身に様々な問題が生じていること、さらにはこの影響が長期的にも影響を及ぼし、世代を越え、現在子どもたちを養育する立場の成人にも及んでいることが明らかにされました。
また会場も含めた議論では睡眠学会の元理事長の3名の先生方も発言して下さり、眠りに関する教育が、個別の有用な試みはあるものの、指導要領の上では小学校6年間で小3における保健体育の中での1時間のみである現状が明らかにされ、初等教育における睡眠に関する教育の不備が参加者の共通認識としてなされました。養育者の意識改革が必要であることは論を待ちませんが、教育の成果には時間がかかる点を鑑み、初等教育に睡眠に関する教育を充実させることは国家としての喫緊の課題でとの危機感を共有しました。
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