ページタイトル 読み聞かせで自殺を減らそう!

対象者: 一般向け

読み聞かせで自殺を減らそう!

 自殺に前頭前野のセロトニン機能低下が関連している可能性が考えられている。そこで唐突に感じられるだろうが「絵本の読み聞かせ」で自殺防止を考えてみた。
 絵本の読み聞かせは、読み手が相手の反応をみながら、声の大きさ、調子や抑揚を変えながら行うことが醍醐味だ。早く寝かせようと、一部を飛ば読みしたりすると、子どもはすぐさま反応する。そんなやりとりが絵本読み聞かせの魅力であり、大切なところだ。これは経験論で、多くの方が実感していたに違いない。ところが私の大学時代の同級生、現在東京医科歯科大学教授の泰羅 雅登氏がこのような経験論の背景にある脳内メカニズムを発見した。まず子どもの脳だが、絵本の読み聞かせをされている子どもの脳では大脳辺縁系(気持ちの脳、感じる脳)、泰羅教授のいう心の脳の活動が高まる(2009)。興味深い所見は読み手の脳の変化だ。泰羅教授は読み聞かせをしている最中のお母さんの脳を調べたのだ。するとお母さんの脳では、絵本をただ音読している時には前頭前野に血流増加が見られなかったが、読み聞かせをしている時には同部位の血流が増加したことを見出したのだ(Hajiら、2007)。前頭前野はヒトの知恵の源のみならず、イライラ感や衝動性を抑える働きにも関わっている。お母さんの精神的な安定を図るうえからも絵本読み聞かせは大切なのかもしれない。前頭前野のセロトニンが減ることと自殺との関係も指摘されていた。脳の仕組みには男女で違いがあるので一概には言えないし、前頭前野の血流上昇がセロトニン活性の上昇を意味するわけではない等々まだまだこれから埋めなければならない溝はある。それでも私は、絵本の読み聞かせをお父さんがすることによって、働き盛りのお父さんの危機回避(自殺防止)にもつながるのではないかと期待を寄せたくなってしまっているわけだ。読み聞かせは今のところお母さんの専任事項のようですが、私の主張は、お父さんもっと読み聞かせをして!!だ。このキャンペーンを張ることで、お父さんの前頭前野の機能が高まることはもちろんだが、帰宅時間も早まり、睡眠時間そのものが増えることもあいまって、好循環が始まるのではないかと期待している。たかが読み聞かせ、されど読み聞かせ、と言えるかもしれない。


Haji T, Tajima N, Matsumoto M, et al. Cortical activations of mother and child during reading to child -Yomikikase- : an fNIRS study. Proceeding of the 84th Congress of the Physiological Society of Japan, 2007, 169.
泰羅雅登(2009)。読み聞かせは心の脳に届く、東京、くもん出版。

 PDFファイルをご覧になるにはこちらから:閲覧する


>> レポート一覧へ戻る <<

神山潤 公式サイト トッププロフィールレポート