私は長いこと眠りを勉強していました。動物実験もロサンジェルスでしました。
帰国後日本の子どもたちの夜ふかし朝寝坊を知りました。
当時はまだ夜ふかし朝寝坊が心身に与える悪影響については十分な根拠を持って説明できるだけのデータが集積していたとは言えませんでしたが、直感的にまずい、と感じました。
その後基礎科学からも、臨床報告としても、夜の光のとんでもなさと、朝の光の重要性にかんする知見が続々と集積してきています。また早起き早寝が心身の健康に重要なことは、生体時計や、セロトニンやメラトニンが知られる以前の大昔から述べられていることも知りました。インドのアユルベーダでは3000年前から、日本でも江戸時代、養生訓や病家須知などで指摘されています。病家須知には夜は早く寝、朝は日の出前に起きるがよい、とあります。私の直感はいにしえからの知恵に支持されていた、というわけです。
最近私がいろいろな場で申し上げることに、直感に自信を持ってください、ということがあります。実は直感に自信を持つには「自分で考える」という作業過程が必要なのですが、これが訓練されていません。ですから多くの方は直感に自信を持てないのです。たとえば子育て中の親御さん。お子さんの一番近くにいるのは親御さんです。ぜひお子さんをよく見て、お子さんの様子を知って、親御さんご自身の直観に自信を持っていただきたいと思います。体温が37.6度だから病院に行くのでは困ります。36.8度だけど、どうも様子がおかしいなら病院に駆け込んでください。このことは皆さん自身にもあてあまります。ぜひあなた自身の身体の声を聞く習慣を身につけてください。これが直感の源です。「だれだれ先生がこう言っていたから」「インターネットに書いてあるから」等、情報で判断することは、直感に自信を持つこととは少し違うだろうと感じています。メタボリック症候群を例に挙げると、ウェスト周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上であれば要注意であるといわれています。84.9cmは良くて、85.1cmは悪いなんていうことはありえないでしょう。腹囲が100cmだって長生きする人はいるわけですし、腹囲が82cmだったら、必ず長生きするというようなことでもありません。その人その人に合った腹囲があるということを全く無視して、基準を出すということは、適切ではありません。したがって、そういう場合も自分の身体の声を聴いて、腹囲が88cmでも自分の身体の調子が良ければ、「自分には腹囲88cmが合ってるんだ」と認識すればよいと思います。それが「自分の身体の声を聴く」という考え方であり、ご自身の直感に自信をもつ、ということです。「自分の身体の声を聴く」のは簡単ではないと思いますが、例えば、うんちの形を見たり、毎日同じ時間にうんちが出るかということを知ることなども自分の身体の声を聴く手がかりとなるはずです。うんちは身体の便り、とおっしゃっている研究者の先生もおられます。ご自身の、そしてお子さんのウンチをお子さんと一緒に見ることも、自分の身体の声を聞くことの練習になるかもしれませんね。
またヒトという動物は多くの方で、午前10-12時にしっかりと目が覚めて活動できるように作られているようです。この時間帯に眠くならなければ、基本的にご自身の眠りの量、質、そして生活リズムに大きな問題はないと考えてよいでしょう。午後2時に眠くなったら居眠りをすればいいのです。午前中に目が覚めていることができるように、生活リズムを調節してみてください。ただし1歳代ではまだ午前寝をするお子さんもいらっしゃいます。午前中の様子で体調を判断するのは2歳以降でしょうか。どうすれば午前10-12時に眠くならないようにすることができるか?これもご自身の身体の声を聞きながら実現させてください。
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