最近生体時計の周期に関する興味ある研究結果が発表されました(Smith MR, et al. (2009) PLos One, 4, e6014)。生体時計の周期には相当にばらつきー個人差ーがあり(左上)、さらに人種差もあり、白人の方がアフリカ系アメリカ人よりも生体時計の周期が長い(右上)、という結果です。でもそもそもなぜ生体時計の周期は24時間ピッタリではないのでしょうか?その理由はまだ解明されていませんが、多少想像力をたくましくして考えてみます。
ヒトの生体時計の周期は地球時間の周期とズレているので、無意識のうちにヒトは毎日自分の生体時計と地球時間との間にあるズレを、朝の光を利用して同調させています。もしも生体時計の周期が地球時間と同じ24時間である生物がいたならば、その生物は生体時計と地球時間とにズレがないわけで、ズレを同調させる必要はなくなります。すると生体時計と地球時間のズレを同調させる特殊な仕組みが使われる機会は少なくなります。そして毎日使う必要のない仕組みは当然使われなくなってしまうでしょう。そのような安定した状態であった生物に、仮に何らかの異変が生じて、体内のリズムの相互関係に異常が生じたらどうなるでしょうか。当然ながら体内のリズムのズレを修正することができません。その結果生きていくことが難しくなってしまうのではないでしょうか。現在のヒトのように、生体時計の周期が地球時間と多少ズレのある生物は、毎日朝の光による同調という微調整機能を働かせる事ができ、この微調節が生体維持の上からは非常に重要な意味を持つのではないでしょうか。生体時計の周期が地球時間と同じ24時間である生物は自然淘汰されたのではないでしょうか。
さて生体時計の周期の人種差の話に戻りましょう。赤道近くで長いこと生活するうちに、日照時間の変化が少ないがために、生体時計の周期がアフリカ系の人々では24時間に近づき、一方日照時間の変化が大きい高緯度で生活している白人の人々では生体時計の周期の24時間からのずれが大きくなり、より変動に適応しやすくなった可能性はどうでしょうか。これまた想像の産物です。なお同じ研究では調べた季節や年齢によっても生体時計緒周期には違いがあり、5-6月には長くなり(左下)、30歳以前の方が長い(右下)、という結果でした。ただし同じ方で様々な季節で調べたり、同じ方で何度も年齢を追って調べた結果ではありません。結果解釈には注意が必要でしょう。
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