早いものでこのHPを開設して早くも1年がたってしまいました。お陰様でこの1年で5万を越えるアクセスを頂きました。これは毎日140を超えるアクセスを頂いていることとなります。1年365日毎日100人を超える方々に集まっていただく講演会を開くことは現実には困難です。ありがたいことと、感謝申し上げます。またアクセスしていただいた方の平均の滞在時間が2分41秒、というデータも明らかになりました。単に覗くだけではなく、文章を呼んでいただいているようで、これも感激です。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。
さて1年前、このHP開設の頃はサマータイム問題が議論されていました。小生の最初のレポートも「サマータイムはヒトの心と身体にやさしくありません(08/7/3)」でした。この問題はその後文藝春秋にも寄稿させていただいたりして、今は何とか下火になっています。ただ生体時計や身体を無視して大脳皮質がついつい大きな顔をしてしまう今の状況では油断大敵です。常にあちこちに目を配って、怪しげな動きには速やかに対応できるように、怠りない準備に万全を期しておきたいと思っています。
この1年を振り返っても、相も変わらず、生体時計や身体を無視して大脳皮質が大きな顔をしてしまうこと、大脳皮質の傲慢を感じることが多々あります。24時間テレビや28時間テレビは性懲りもなく続き、詭弁と偽善をまき散らしていますし、朝スぺが始まったという話は聞かず、夜スペはきっと繁盛しているのでしょう。不況下で残業がなくなり家庭回帰が起こるのではとの淡い期待も、副業容認という大脳の知恵が登場。半年前には雇用確保を声高に叫んでいたにも関わらず、ハイブリッドカーとUSBメモリーの売り上げが伸びを見せると、米国ではworksharingでペイオフを回避している日本企業も、途端に残業を再開、日本人のmoney-oriented life styleをあらためて目の前に突きつけられた思いです。2009年7月1日の産経新聞1面「経済が告げる」(田村秀男)(PDF)では、借用書(金融商品)では対応できなくなる(バブル崩壊、金融危機)と、実際にお金を発行してしまうというヒトの傲慢さを指摘していますが、これも大脳皮質の悪知恵の典型でしょう。休日夜間の高速道路料金値下げは、如何に日本人の「エコ」が看板倒れで中身の全く伴っていないものであることを露呈しています。地球を守ろう、自然を大切に、という言葉の虚しさを感じますが、最も身近な自然である自分の身体を夜ふかしと気合と根性とで痛みつけている現状を考えれば、ある意味至極当然で、論理矛盾のない施策なのかもしれません。
また皆が極めて近視眼的になってきていることに最近は恐怖すら感じています。20分後の20円よりも5分後の5円を求める低セロトニン人間が、寝不足で運動不足で噛まなくなった日本人の中でどんどん増殖していると感じます。ちなみに20分後の20円よりも5分後の5円を求める低セロトニン人間の話は、大阪大学准教授田中沙織博士の研究成果で、以下に紹介します。目先の報酬を予測しているときは、前頭葉眼窩皮質や線条体の下部を通る回路(情動的な機能にかかわる)が活動し、将来の報酬を予測しているときは、背外側前頭葉前野や線条体の上部を通る回路(認知的な機能にかかわる)が活動する(Tanaka SC, Doya K, Okada G, Ueda K, Okamoto Y, Yamawaki S. Prediction of immediate and future rewards differentially recruits cortico-basal ganglia loops. Nat Neurosci. 2004;7:887-93.)のだそうです。また、被験者の脳内のセロトニン濃度が低いときには、短期の報酬予測回路がより強く活動し、セロトニン濃度が高いときには、長期の報酬予測回路がより強く活動し(Tanaka SC, Schweighofer N, Asahi S, Shishida K, Okamoto Y, Yamawaki S, Doya K. Serotonin differentially regulates short- and long-term prediction of rewards in the ventral and dorsal striatum. PLoS One. 2007;2:e1333.)、脳内のセロトニン濃度が低いときには、衝動的に目先の報酬を選びがちになる(Schweighofer N, Bertin M, Shishida K, Okamoto Y, Tanaka SC, Yamawaki S, Doya K. Low-serotonin levels increase delayed reward discounting in humans. J Neurosci. 2008;28:4528-32.)のだそうです。ちなみにセロトニンは朝の光とリズミカルな筋肉運動で働きが高まるのでしたね(08/8/30, 09/5/2のレポート参照)。
とはいっても文句ばかり言っていても先には進みません。具体的成果、政策提言を取り上げていただけるよう、地道に努力を続けたいと思っています。今後とも応援の程、よろしくお願いいたします。
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