ページタイトル どの程度の夜の光がとんでもないのでしょうか? 和歌山県養護教諭研究協議会での講演の感想と、講演後いただいた質問から

対象者: 一般向け

どの程度の夜の光がとんでもないのでしょうか? 和歌山県養護教諭研究協議会での講演の感想と、講演後いただいた質問から

 2008年12月19日に和歌山県養護教諭研究協議会で講演させていただきました。300人はこえていたでしょうか、多くの先生方にお集まりいただき、熱心に話に耳を傾けていただきました。ありがとうございました。以下のような励みになるご感想もいただきました。ありがとうございました。

・大変理解しやすい内容で、参考になった。 興味深く聞けた。(多数)
・科学的に基礎となる理論が学べて良かった。 理論的に聞けた。(多数)
・今後の保健指導にいかして行きたい。 参考にしたい。 勉強になった。(多数)
・神山先生のお話をずーっと聞きたいと思っていたので、とても嬉しかった。睡眠について子どもたち、親に向けて理論をきちんと説明したいと思いました。(多数)
・とても専門的で興味深く聴かせていただきました。(多数)
・睡眠がなぜ大切なのかしっかり理解でき、今日教えてもらったことを子ども・家庭・職場へと伝達していきたいと思います。(複数)
・事例に載りそうな児童と関わっていてよく納得した。(複数)
・理論武装して、元気な子どもが増えるように頑張りたい。(複数)
・特に攻撃な子どもが増えてきた今、セロトニン、メラトニンの話は興味深く、ほけんだより等で保護者の方にお知らせしたいと思いました。(複数)
・私たちが指導していく上で、いちばん身近な事柄を理論的にわかりやすく教えていただきました。押し付けでなく生徒自らが、どうしなければならないのかを考え行動できるよう、今日の講演を聞いて明日からの保健指導にいかしていきたいと思います。
・知っているつもりだが、本当はよくわかっていないことを教えていただいて、だから大切なのだと改めて思った。
・成長ホルモンについての見識に違いがあったので参考になりました。
・「早寝・早起き・朝ご飯」を毎日指導しているが、力強い後ろ盾ができた。
・すごく身近でありながら、深く研修する機会がありませんでしたので、いい勉強になりました。
・眠りについて詳しく、深く学ぶことができました。睡眠の大切さがわかっていても実行に移す難しさもありますが、子どもたちにはしっかり伝えたいです。
・人の話を真に受けないでいったんは必ず自分の頭に入れ考えていきたい。朝の光を大切に受けていきたい。当たり前のことを学びました。今後も睡眠の大切さ早起きの大切さを考えたい。
・睡眠の意味についてじっくり聞けたので良かったです。自分なりに、コンパクトにまとめて現場で使いたいです。
・夜型の子どもが増えている背景に保護者の生活習慣に子どもを巻き込むことが問題だと思っていました。講演の最後に自分の身体の声を聞く習慣をつけることが大切だと聞いて、睡眠をきっかけにして、自分の身体の声を聞くことは指導しやすいと思いました。冬休み前なのでタイムリーでよかったです。
・改めて睡眠の大切さを感じました。どう行動に結びつけるか課題をもらった気がします。
・成長ホルモンについての見識に違いがあったので参考になりました。理論武装できるように、知識を広めたいと思った講演でした。
・大変わかりやすい説明で、早寝早起き・朝ごはん・朝の光の大切さを実感した。子ども達も含め、自分に対しても今の生活習慣改善の必要性を感じた。
・早口であったがわかりやすかった。知識を親に伝えても行動に移してもらえるか?です。(社会の在り方から)

 講演終了後「夜の光はとんでもない、とのことでしたが、どの程度の光がいけないのでしょうか?豆電球程度の明かりもいけないのでしょうか?」というご質問を受けました。以下が私のお答えです。

 それは23ルクスがいいですね。とたとえば,こう言ったとします。でもそのようなことができるわけはないですよね。
 突然ですが、おもちゃ美術館館長の多田千尋さんから伺った話を紹介させていただきます。多田さんは一生懸命に手遊びを広めたい、との思いで全国、いや世界中に出かけていらっしゃいます。手遊びを紹介するある講演会での話です。さまざまな手遊びを紹介なさっていたのですが、一番前で一生懸命にメモをとりながら話を聞いている方のことが気になっていらっしゃったそうです。一番簡単な手遊びとして、「イナイイナイバー」を多田さんが紹介しました。その時だそうです。一番前で熱心にメモを取っていた方が手を挙げて質問なさったそうです。「イナイイナイバーのイナイイナイ派は何秒したらいいのですか?」多田さんは即座に答えました。「今の世界標準は0.8秒です。」無論冗談です。この話で私が何をお伝えしたいかと言えば、あまりに周りの情報に惑わされないでください。ご自分の感覚に申すこそ自信をお持ちになってはいかがですか?ということです。
 先ほどの23ルクス発言は冗談ですけれども,光に対する感受性は非常に個人差が強いんです。だから,朝は何ルクスの光を何分浴びたらいいですよ,夜は何ルクスの光を何分浴びたらいけませんよ,とはなかなか言いにくいわけです。ですから,朝はなるべく強い光を浴びてください。夜はなるべく光を浴びないでください。それに尽きるわけです。
 まず朝の光に関してですが、実は人工光と比べると、自然光の方が圧倒的に照度が強いことがわかっています。ですから,朝に浴びるのでしたら、なるべく自然光を浴びてください、ということになります。もちろん住宅事情等で人工光で代用せざるを得ない方は致し方ありません。
 ですから、夜の光については、なるべく夜には光を浴びないでください、としか実は申し上げようがないのです。夜の光にはすべての光が含まれます。コンビニの光もそうだし,街灯の光、それに携帯の画面も含めたさまざまなディスプレイからの光などもすべて含めて、夜はなるべく光を浴びないでください、ということになります。夜の光のとんでもなさは、生体時計の周期に対する悪影響とメラトニン分泌を低下させてしまうということでした。実は最近になってもう二つほど、夜の光のとんでもなさが指摘されています。夜に光を浴びていると、生体時計の働きを担っている視交叉上核のなかの中の細胞同士の連絡が悪くなってしまうこと、そして2007年10月22日に報道(添付PDF参照)された、。真夜中に光を当てると、体内時計の働きそのものが止まってしまうというデータです。実は10月22日の前日、つまり10月21日は明かりの日です。それは1879年10月21日にエジソンが光をはじめてともしたからです。今から129年前、エジソンが光をはじめてともしたときには「ああ、これで人類が24時間いつでも行動できる」と喜んだのかもしれません。ただ、それから130年たってみると、「どうもヒトという動物は夜に光を浴びては都合が悪そうだ。」というデータが今次々に出ているということかと思います。
 先ほど光に対する感受性は非常に個人差が強い、ということを申し上げましたが、これは生体時計の周期への影響に関することです。ところがメラトニンへの影響は昔は200ルクスくらいまでは影響ないと言われてたんですけれども,最近は10とか20ルクス,つまり月明かりくらいでも影響があると言われています。ですから,メラトニンを出そうと思ったら,真っ暗で寝るに限る、ということになります。ただ,ここで申し上げたいのは、ひとは何もメラトニンを出すためだけに寝てるわけではない、ということです。眠りの大切さには実に様々な事柄があります。また真っ暗では眠れないという方や、眠っているお子さんの安全性の確認の必要性の問題もあると思います。ですから私はなるべく暗いところで寝てくださいという程度でいいのではないかと思っています。テレビ等のディスプレイ画面や街灯が煌々と顔を照らす、という状況ではない、常識的な暗さでよいのではないかと考えています。
 最初にこのご質問に対して、23ルクスと申し上げたり、多田先生の話を紹介したのは、どうも多くの方が数字がお好きだ、ということも絡んでいます。一方私は話の中では、意識して数字を出していません。何時間寝なさい、何時に寝なさい、何時に起きなさいということは一切申し上げていません。これは何時という数字を言った瞬間,その数字だけが覚えられて,その背景にある理屈を全部忘れ去られてしまうからなんです。だから私はわざと数字は言わないのです。ちょっと考えてみていただければ分かると思うんですけれども,12月の九州福岡だった,7時でもまだ暗いですが,6月の北海道に行け3時から明るいわけです。ですから,数字というのは住んでいる場所,季節によって全く変わってくるわけです。大事なのは朝早く起きるということになります。実は江戸時代の家庭医学書の病家須知というのがあります。これは天保三年1832年に発行されたのですが、これに何と書いてあるかというと,「夜は早く寝て朝は日の出前に起きるのがよい」とあります。これに尽きるわけですね。生体時計のこと,セロトニンのこと,メラトニンのことを知らなかった江戸時代の方もこういったことを言っているわけです。数字じゃなくて夜は常識的な暗さのところで、早く寝て,朝は日の出前に起きるのがよい。こういったことでご勘弁いただけないかと思います。よろしいでしょうか。

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