ページタイトル メラトニン

対象者: 一般向け

メラトニン

 今朝(2008年8月23日)JR車内の動画情報に「早寝早起きが大切、なぜならメラトニンがでてくるから」という趣旨でした。このような形で多くの方に「早起き早寝」(私は早起きをして朝の光を浴びることが第一義的に大切、ということを強調するために「早起き早寝」にこだわってます)の大差手差が伝えられるのは大変うれしいことです。ただチョットチョット間違っていることも紹介されていましたので、知識の整理、という意味で急遽メラトニン情報を掲載します。
 メラトニンというのは朝、目が覚めて14時間ないし16時間して、夜暗くなると出てくるホルモンです(スライド1)。メラトニンは脳の松果体という場所から分泌されるということがわかっています。このメラトニンにはどんな働きがあるかというと、抗酸化作用(老化防止・抗ガン作用)、リズム調整作用(鎮静・催眠)、性的な成熟の抑制という働きがあります(スライド2)。抗酸化作用は酸素の毒性から細胞を守る極めて大事な働きで、この作用があるメラトニンには老化防止作用或いは抗ガン作用があるのではないかと言われています。メラトニンにはさらにリズム調整作用、性的な成熟の抑制があるのですが、子どもたちの夜更かしの関連で大事なのは、年齢との関係と光との関係の2つです。
 まず、年齢との関係ですがメラトニンは1歳から5歳ころに一生のうちで一番たくさん分泌されることがわかっています。これを私は「子どもたちはメラトニンシャワーを浴びて成長する」と言っています。なおメラトニンシャワーが減ってくるのが思春期です。つまり性的な成熟の抑制というメラトニンの働きがなくなるために性的な成熟がおきる。二次性徴がおきるということです。もう一つのポイントは、メラトニンは夜でも明るくするとその分泌は大幅に減ってしまうということです。メラトニンの分泌は光で抑えられてしまうのです。この二つのことから子どもたちが夜更かしをして明るいところで過ごす時間が増えると、子どもたちが本来浴びるべき「メラトニンシャワー」を浴び損ねてしまうのではないかと私は心配しているのです。そこで調べたところ夜更かしの子どもたちの方が、早寝の子どもたちよりも朝のメラトニン濃度が低い傾向にあることがわかりました。まだ一晩中のメラトニン濃度を測ったわけではないので断定的なことは言えませんが、私の心配のとおり子どもたちが夜更かしをしていると、本来浴びるべき「メラトニンシャワー」を浴び損ねてしまうのではないかということが、「当たらずとも遠からず」で、今後とも注意していきたいと思っています。
 では、メラトニンシャワーを浴び損ねると、どういうことが起きるのかについては、まだ実証的なデータが無いのが正直なところです。しかし、メラトニンの働きを考えると将来ガンが増えるのではないかとか、或いは性的な早熟が起きるのではないかということが想像はされますが、まだはっきりとした実証的なデータはありません。考えてみれば当たり前なのですが、子どもたちがこんなに夜更かしをしているとんでもない国は世界中に日本しか無いわけで、すごく皮肉な言い方をすれば日本で大規模な実験が行われているという言い方もできなくはありません。
 そんな中、生活習慣の乱れが性の成熟を早めるという研究成果が発表されています(スライド3)。大阪大学の先生のデータで女の子の初潮年齢についてですが、平均の初潮年齢と1週間の朝食の回数、或いは1日の平均の睡眠時間の関係を調べたところ、1週間毎朝、朝食を食べていた子の方が初潮年齢が遅い、たっぷり8時間寝ている子の方が初潮年齢が遅い。夜更かし朝寝坊で睡眠時間が減って朝食ぬきの子どもたちの方が初潮年齢が早いというデータが出てきました。この研究ではメラトニンを計っていないので、勿論、断定的なことは言えないのですが、私の仮説と合うデータとして注意してみていきたいと考えています。
 「メラトニンが出なくなるぞ」、「出なくなるぞ」と脅かしてばかりではいけないので出る方の話をします。メラトニンの分泌を増やすには、昼間に光を浴びるとよさそうだ、というデータです(スライド4)。高齢者のデータです。高齢で不眠を訴える方(青)はメラトニンの出があまり良くないのです。同じ高齢者でも良く眠れるという方(黒)は出方が少しいい。眠れないと言っていたメラトニンの出の悪い方に、昼間たっぷり光を浴びてもらったらメラトニンが出るようになって夜眠れるようになった(赤)、というデータです。夜の光はメラトニンの分泌を抑えますが、昼間の光というのはメラトニンの分泌を高める働きがあるようです。
 メラトニンには直接気持ちを穏やかにしたり、リラックスさせる働きはがありませんが、メラトニンがでて、しっかりと眠ることで、気持ちが穏やかにしたり、リラックスすることはできると思います。

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