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2022/01/19

デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える  堤未果著

タブレットがないと、全部自分の頭で考えないといけない。でもこれ(タブレット)があれば、間違えたときすぐ説明されて、前に進んでいけるんです。

東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉教授は、スピードや効率化など、デジタル化のメリットに一定の理解を示しながらも、考える前に調べるようになってしまうことなどをはじめ、複数の危険性に警鐘を鳴らす。
 紙の教科書と違い、液晶画面で読むものは、空間的な手掛かりがつかみにくいため記憶に残りにくいこと、ネット検索で情報過多になり、考える前にすぐ検索してしまい頭を使わなくなること、そしてメモを取る能力と字を書く能力、そして内容を咀嚼する能力が落ちてしまうことだ。
 これについて、東大とNTTデータ経営研究所、日本能率協会マネジメントセンターの三者が合同で、電子機器と紙の手帳の記憶について比較調査を行っている。18~29歳の48人を、手帳、タブレット、スマホの3グループに分け、それぞれにスケジュールを書き入れさせた後、MRIで脳活動を測定したのだ。
 すると、スマホ・タブレットの電子機器群に比べ、紙の手帳を使ったグループは記憶に関する脳活動が活発になり、記憶力も優位という結果が出た。人間は記憶力をもとに新しい思考や創造的発想を生み出してゆくため、記憶力を優位にする「紙に触れ、手で書く」という行為を、疎かにしてはいけないのだという。
 教科書は時代遅れ、タブレットこそ最先端という考えは、パンデミックをきっかけに急激に広まっているが、酒井教授は「時代遅れどころか、紙の本とノートを使うことこそ最先端」だと言い切っている。
 「デジタル文字が奇麗に並んでいるタブレットを見ただけで、わかったような気になってしまう。一方、自分で書いた文字は不完全なので、自ら考えて結論を出さなくてはなりません」

 ビル・ゲイツは自分の子供たちに14歳までスマホやタブレットを持たせず、その後も食事中と家族でいる時は、電子機器の利用を禁止した。アップルの創業者スティーブ・ジョブスは娘たちにiphoneもiPadも持たせなかった。グーグル幹部をはじめ、西海岸のテック企業幹部の子供たちが通う、シリコンバレーで一番人気のある学校「ウォルドルフ・スクール・オブ・ザ・ペニンシュラ」では13歳より前の子供たちをテクノロジーに触れさせることを、以下の理由から許可していない。<デジタル機器の利用によって、子供の健康な身体、創造性と芸術性、規律と自制の習慣や、柔らかい頭と機敏な精神を十分に発達させる能力が妨げられるためです>
 その一方で、サンフランシスコで毎年開催される<Habit Conference(人間の習慣に関する会議)>では、彼らのようなテクノロジー企業や技術者が、どうしたら自社のアプリの中毒性を極限まで高められるかについて真剣に話し合う。その試みはしっかりと営業成績につながり、文字通り世界規模の大成功を収めている。

社会全体が待てなくなってきている。

私たち大人ができることは「公教育」という公共空間の価値を認識すること、そこに入る私企業が子供たちの未来や人権を脅かさないよう、法の力でしっかり線引きをすることだ。

 AIは、問いをくれない。くれるのは答えだけ。もし人間から「問う力」が」なくなれば、「考える力」も失ってしまうだろう。
 人間にとって大事なのは「問う」ことなのだ。
 ニュースを見ても、人と会っても、季節の移り変わりを見ても、「なぜ?」「どうして?」と好奇心を持ち、問いを口に出すことで、」目に映る世界は大きく、広く、深まっていく。
 問いがあるから、自分で考え、知らなかった答えに出会うことができる。
 ドイツの哲学者マルクス・ガブリエルはこう言った。
 「AI]には倫理がない。だから絶対にAIが人間に教えることはないと信じたい」
 肉体がなく決して死なないAIには、倫理観がない。
 なぜなら倫理観とは、死を迎えるからこそ持てるものだからだ。

 「おかしい」と口に出すたった一人の声が、多くの人が絶対に変えられないと思いこんでいることを変えるのだ。 




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