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2021/03/17

人新生の「資本論」 斎藤幸平著 読了。

第一章では、資本主義が人間だけでなく、自然環境からも掠奪するシステムであることを見た。そのうえ、資本主義は、負荷を外部に転嫁することで、経済成長を続けていくことを確認。
第二章では、経済成長をしながら、二酸化炭素排出量を十分な速さで削減するのは、ほぼ不可能であることを示した。
経済成長を諦め、脱成長を気候変動対策の本命として検討するしかないわけだが、第三章の課題は、どのような形の脱成長が必要なのかを検討すること。そして四つの選択肢を提示(1.気候ファシズム(現状維持して資本主義と経済成長にしがみつき、機構変動被害を被り、惨事便乗型資本主義が一部富裕層にさらなる富をもたらす)、2.野蛮状態(1%の超富裕層と残り99%間の争いとなり、後者が勝利し、統治体制は崩壊、混乱に陥る)、3。気候毛沢東主義(貧富の格差対立を緩和しながら中央集権的独裁国家による気候変動対策が取られる)、4.X(民主主義な相互扶助の実践が自発的に展開、公正で持続可能な未来社会が到来))。いずれにしても来るべき環境危機に対しては、資本主義を批判し、ポスト資本主義の未来を構想しなくてはならない。
第四章でマルクスを俯瞰、未完の資本論を脱成長コミュニズムの理論化として引き継ぐような大胆な新解釈に挑む必要性を結論とした。キーワードはコモン。
第五章ではジオエンジニアリングやNET(negative emission technology)のように、先進国を優先して、「外部」の人々を犠牲にするような「閉鎖的技術」ではなく、コミュニケーション、協業、他者との交流を促進する「開放的技術」の必要性を確認、資本主義に挑むためには「潤沢さ」を資本主義の消費主義とは相容れない形で再定義しなければならない、とする。つまり経済成長と潤沢さを結びつけるのをやめ、脱成長と潤沢さのペアを真剣に考える必要がある。
無限の経済成長を断念し、万人の繁栄と持続可能性に重きを置くという自己抑制こそが、「自由の国」を拡張し、脱成長コミュニズムという未来を作り出す、が第六章の結論。
第七章曰く、利潤最大化と経済成長を無限に追い求める資本主義では、地球環境は守れない。人間も自然も、どちらも資本主義は収奪の対象にしてしまう。それよりも、減速した経済社会をもたらす脱成長コミュニズムの方が、人間の欲求を満たしながら、環境問題に配慮する余地を拡大することができる。それには電力や水の公営化、社会的所有の拡充、エッセンシャルワーク(ケア労働等使用価値が高いものを生み出す労働;医療、教育、保育、介護)の重視、農地改革などを含む、包括的なプロジェクトにならなくてはいけない。
第八章では持続可能で公正な社会を目指すプロジェクトの基礎は信頼と相互扶助、と指摘。
そして、おわりに、では、3.5%の非暴力的な市民不服従が社会変革をもたらしうる、と結んでいる。




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